SNSなどで見かける溶接したアイアンのフレームに古材の天板を持つテーブル。
カッコいい組み合わせだなと思っています。ラフに溶接された雰囲気が古材のヤレた雰囲気とすごくよくあっているものを見かけます。
「よし、そういうテーブルを俺らも作ろう!出来るだろ!」と鉄を扱う町工場と石屋で思い立ちました。ですが、よく考えてみれば鉄を扱う町工場といっても専門は金属の切削加工です。鉄やステンレスなどを機械加工で精密に削り出す技術をもっていて、金属を溶接することは出来ません。一方で石屋は石を扱っています。木材よりも石の方が身近な職種です。
鉄を溶接してフレームを作り、そこに古材の天板を載せるにはすこし持っている技術と素材が違っていました!それをやるなら溶接工さんと大工さんの組み合わせの方が良さそうです。
そこで切削した鉄でフレームを作り、天板には割れた石を継いで使用することに方向転換して制作を開始しました。
鉄が酸化被膜として持っている黒皮と呼ばれる皮膜には防錆効果があり、荒々しい独特の風合いを持っています。溶接する場合はこの酸化被膜を除去することが多いため、金属の切削加工で行う金属のフレームでは、なるべくこの良い感じの酸化被膜を失わないように加工することを決めました。その一方で天板周りと脚をつなぐジョイント材は、精密機械加工屋の特技、「無垢の鋼材から削り出し」で製作しています。固定に使用するネジは表側には出さないルールも作りました。普通インダストリアルな雰囲気を持った家具ではボルト類やリベットなどが表しでついていて、それがいわゆるインダストリアルなイメージになっています。もともとヴィンテージの家具がそういう作りで、それを真似て作っているのかなと想像しているのですが、今回は昔っぽいものを作ろうとしているわけでもございませんので、ピシッとシンプルにボルトの類は表に出さないようにしています。
1/100㎜単位で加工精度を要求される町工場の切削加工。
仕上がってきた鉄のフレームは、当初イメージしていた「ラフに溶接されたいい感じのフレーム」とは全く別物でした。ピッタリとあわされた角のラインは、見かけない雰囲気を漂わせていました。そして予定通り、石屋は勇んで割れた石を目地で継いで天板を仕上げていきました。下の2枚の写真は目地を入れて天板を製作した時のものです。
石の仕上げ方を変え、目地材を充填して一枚の天板に仕上げています。
目地材の色も、青みをほんの少し感じさせる黒い石に合わせて調節し、一生懸命やって、養生やらクリーニング、表面の撥水コーティングまでしておいて、いや、ちょっと待てよと。。。
どうしても、ピッタリ合わされた鉄のフレームの凛とした雰囲気に石の目地材がそぐわない感じがします。こんなのやり直すなんて相当気が引けますし、やり直したくはないものです。
でも石を割って天板をやり替えることにしました。スパーンと石をはずして気分すっきりでした(笑)
今度は目地材を使用せずに、石を突き合わせて鉄のフレームに嵌め込んでいきます。
大きな面積を持ったテーブルや、大きな建物でこれをやってはいけません。比較的ちいさなローテーブルなので問題ない方法です。
完成品はこちらです。
おかげでフレームの中に数枚の石をそれぞれ切って、嵌め込むことが出来るようになりました。仕事でいきなりこういう加工のお話を頂いてもできなかったと思います。隙間の時間で、失敗の許される環境で、試行錯誤できたからできました。
一度できたものはさらに練習して、仕事の幅を広げることにつなげていきます。
精度よく加工された、精密機械加工の鉄のフレームは、「まぁいいか」を許してくれない凛とした雰囲気を持っています。その後工程で入るのは大変です。前工程の良い仕事は、自分のできるだけの仕事で、まだまだですが、出来る限りの仕事で応えたいと思わせます。
サタデーファクトリーはそれぞれ業種の違う職人の集まりで、拠点もそれぞれバラバラですので、適当な仕事が後工程に続くとみんなおもしろくありません。そうは思われたくない製作者の気持ちによる品質管理システムと、目利きの事務局による品質チェックがダブルで機能しています。
蛇足ですが、石の角は硬い印象になりすぎないよう軽く手で斫って仕上げています。ここは一度テーブルを壊す前と後で変えた部分です。是非、手で撫でて頂きたい部分です。
町工場と石屋が本業で一緒に仕事をすることはまずありません。何屋が作ったのかパッとイメージしにくい良い具合のローテーブルになりました。
その他の写真など、販売情報はこちらからご覧いただけます。
隙間の時間と、割れてしまった石を活かして製作しております。
一点物ローテーブル「ギーク001」
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