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ものづくりのROOTS

ものづくりの括りでこれまでの事を書いてみました。自己紹介に変えていただけますと幸いです。

  1. 始まりの椅子、門前払いチェアー_学生時代

  2. CO2レーザーでブロックづくり_学生時代

  3. パッシブトランスフォームの大研究をする休日

  4. ​廃材を用いてテーブルを作り始める

  5. ​設計施工でスタジオの内装工事を行う

1. 始まりの椅子、門前払いチェアー_学生時代

サタデーファクトリーを運営している小田切商店の始まりは2000年頃、草原に置く椅子を募集していた団体から頂いた製作費を片手に、町工場を訪ねたことが始まりです。雨上がりの空気が澄んだ草原で、椅子に座ったら座面がべっちゃべちゃでは嫌だなと、パイプを曲げて水切れの良い椅子を作ろうとした当時、3次元で図面を描くための道具はありませんでした。私が町工場に相談しに行くために用意したのは小さな模型。針金を曲げた手のひらサイズで模型を片手に、「これ、作りたいんですけど…」と。おととい来やがれと思ったと思います。当然門前払いです。しかし、技術者と言うものは門前払いするついでに断る理由を教えてくれます。それは裏を返せば作るための条件です。実際に作るために必要な数値情報、製造するための機材や手法の条件などなど。

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門前払いチェアー:13個のパーツから出来ている

当時いた鹿児島のベンダー屋さんを手当たり次第に門前払いされながら、製作するために必要な情報が積み上がっていきました。いつしか針金を曲げただけの模型は、13個のパーツからなる平面図と組み立て図に変わっていました。2Dで曲げたパーツをねじりながら溶接し、3D曲線の一筆書きは作られています。賞金を全て町工場に渡し、1個作ってくださいとお願いした後、呼ばれていくと2台の椅子が出来上がっていました。失敗するとまずいので2台分のパーツを作り、成功したので結局2台出来たよ!とのこと。飛び上がるほど嬉しかったのをよく覚えています。出来ないことの理由をよく聞くこと。それは実現するために必要な条件であることと同時に、本職として暮らしていくために必要な工数であるということ。そしてやったことの無いものを作るには、作る側にもリスクを背負ってもらっていると言うこと。生まれて初めて作った椅子から多くのことを学ばせてもらいました。賞金はすってんてんでしたが、とても良い使い方ができました。

2. CO2レーザーでブロック作り_学生時代

鹿児島県の産業試験センターにCO2レーザーなるものがきたらしい。種子島に鉄砲が伝来して以来の…かどうかはわかりませんが、私にとっては大事件でした。2005年頃と思います。当時鹿児島県関係の何かが親切にしてくださっていて、産業試験センターに出入りしていました。DXFデータを持ってはセンターへ行き、有金を叩いて買ったアクリルをレーザーで切っていました。高価な加工機があればなんでもできるというわけではなく、交点深度の設定や、レーザーの出力具合、ヘッドを動かす速度など、多くの変数をしっかりベストな状態に設定しないとうまく切れません。調整をできるのは熟練の勘所もあってこそ。導入したばかりの機材に手こずるレーザー技師は、ことごとく私のアクリルをゴミに変えて行きます。私に潤沢な資金があるわけもなく、「タダじゃないんですよ!」なんて生意気をいっていました。やってもらっておきながら、我ながら最低です。しかしお互いに持てる技術と素材を持ち寄り、新しい知見を得ていたと思います。技術と素材を持ち寄って後にサタデーファクトリーを始めるのですが、もしかしたら原点はここなのかもしれません。

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アクリルのブロック:8個の平面パーツから6方向に組める1つのブロックが出来ている

高価で自動のすごい機械があると、簡単に加工できると考えるのは間違いです。今となっては普通なのですが、そんな事を学ばせて頂いていた時期なのだと思います。ところで何を作っていたかというと、当時発見したブロックマニア的かっこいいブロックを作り出す理論というものを用いて、自分の好きなブロックを作ろうとしていました。請求項目数十件に及ぶ特許申請を行った頃です。とはいえブロックの3次元の状態はイメージできるものの、2次元しか加工できないCO2レーザーの特性に着地できず悩んでいました。関東と鹿児島を飛行機で移動している際、暇なのでぼんやり考えていると2次元になったブロックの形がポロリと出てきました。頭の中では全く反芻できず、実際に作って2Dパーツが3Dへと組めるのか確かめていた時代です。材料原価と出来てくる物の量や、かかっている時間の関係などを考え始めたのもこの頃です。

都市デザイン研究室にいたのにプロダクト寄り。とはいえ鹿児島の尚古集成館と大学院の研究室でまちづくりのイベントなども企画実施していました。地域の素材の話で盛り上がり開催まで行ったのですが、資料が何も有りません。建築、プロダクト、まちの素材…一体とならない状態で右往左往していた時代です。

3. パッシブトランスフォームの大研究をする休日

確か2010年頃、当時ゼネコンにいた私は熱膨張する素材の性質を使って建物を動かす研究を勝手にしていました。200mくらいある鉄骨造の工場などでは、夏の強い日差しで膨張した金属が大きな力を発します。その力を逃して不具合が生じないように設計することが重要なのですが、パッシブトランスフォームでは力を逃しません。特殊な機構を用い日射熱によって生じる力を建物が動くことに使用します。夏の日差しを受けた構造体は夏の形態に、冬の寒い環境では冬の形態に変化するという建物のような。それは葉を落とす植物や毛皮の生え変わる野生動物に近い感覚です。とはいえ実用性から超絶遠い概念を私的に研究していました。

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当時読んでいたのは機械工学やロボット工学。バイメタルを構造的に再現する研究。

◆解析できるエンジニアを探す

アラップの構造家に概念を話し、動くと思うと助言を頂いてモデル図を作成、国内で解析できる構造家を探しました。椅子を作ろうと門前払いされていた頃とやっていることは対して変わりません。数年が経過する中で、人工衛星などの開発に携わっていた構造エンジニアと出会い、解析をお願いすることになります。簡易モデルならやってあげるよと言うことで、動くのこれ?と言いつつ遊びで解析してくれたあの方は、多分只者ではないと思います。

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宇宙構造物系の論文も読んでいた時期。サーモグラフィのようなかっこいい解析動画があったはず…ないです

気になる解析結果なのですが、めっちゃ動いてました。ただし宇宙空間でw。大気が無いため太陽光の影響を大きく受け、パッシブに形態を変化させる構造システムの素案はこの分厚いファイルに雑に格納されています。きっと役に立つはずです。宇宙で、ですけれど。仕事の余暇である休日や夜中にものづくりを初めたのはこの頃です。

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​構造設計課や技術研究所に協力してもらっていた頃の昼の仕事

◆アリや​鳥もきっと会員だろう

ゼネコンの設計部でプロポーザルに参加する傍、業務として(社)建築業協会50周年記念の仮囲いデザインコンペという変わり種にも参加していました。地球環境を考えながらその会員を50年に渡り増やしてきた建築業協会(BCS)。このまま努力を続け会員が増える未来を思った時、人間に加えアリや鳥も建築業協会の会員になることが予測されます。「地球の建設業協会」の姿を作業員と建築物をセットで並べたシンプルなイラスト。アリの巣のような建築や、鳥の巣のような建築物が世を席巻していた時代です。賞金はもちろんパッシブトランスフォームの研究に投下されています。

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これも資料が何もなく、情報源をリンクに記載させて頂きます。過去の管理が非常に悪く、年代もおぼろ、何の賞なのかもうろ覚え、これではまずいと痛感しましたがもはや手遅れです。過去を管理していないことから、キャリアを作る観点や、自己紹介する観点が決定的に欠落している自分に気づく事ができました。最後まで気づけないより、遅くても気付けてよかったなと思います。こうして書いてみると、お世話になりっぱなしなことにも改めて意識を向ける事ができます。

4. 廃材を用いてテーブルを作り始める

フォークリフトの免許をしっかり取得し、手足のようにマシンを唸らせていたのは確か2016年頃、大半の時間を建築資材の倉庫で過ごしてた頃にテーブルを製作し始めます。材料はどうにもならない専門業の廃材です。出資するお金はありませんでしたが、素材と技術を持ち寄ることでメーカーになれるのではないかという仮説を実行していた時代です。お客さまにご購入いただくまで、試作費も製作費も誰も回収できないけれどもヨコつながりでリスクを分散させていました。その後、量産するプランクリップの開発前後で、製品の作り方は大きく変化しています。現在はサタデーファクトリーがメーカーとしてストックしておりますので、時にGAFAより早い出荷が可能となっています。

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ブルータス:割れた器を継ぎ直す金継ぎに学んだ天板

①継ぎ石と解体材のローテーブル「ブルータス」

割れてしまい規格品としての価値をった天然石を天板に据え、輸入用クレートを解体した木材をボディに使用したローテーブル。割れた部分を丁寧に滑らかに加工し、クレートの中でも特に固くて重い木を選んで使用しています。大工と石屋で製作を行った最初の1台です。重量はおそらく30kg程度でした。参考価格25万円程度SOLDOUT

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ギーク001:石の加工スキルが向上し目地を無くした天板

②鉄と石のローテーブル「ギーク」

マシニングで切削を行う町工場が製作する鉄のフレームは溶接を使用していません。各パーツは見えない部分でボルトによって精緻に接合されており、天板の天然石も目地なしでフレームに嵌め込まれています。機械部品の製造に求められて発達してきた町工場の精度は目に見えない部分に納められるものですが、このテーブルではその精度を意匠としています。パーツを削り出す精度、パーツを切断する精度、ボルト穴の相互の位置を合わせる精度。溶接もなく塗装もなく、隙間なく接合されたフレームは違和感を感じるほどの仕上がりです。町工場のマシニング屋と石屋で製作した1台。参考価格11万円程度SOLDOUT

5. 設計施工でスダジオの内装をつくる

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路地裏のレンタル倉庫3㎡から現在のスタジオに移ってきたのは確か2018年の頃です。資材倉庫の内装を設計施工で行いました。グラスウール充填の上PB12.5_2枚貼りの防音粉塵部屋、中古単管パイプでショールームスペースを製作しています。

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中古の単管パイプで制作された特大什器は、既存の梁や小屋組を避けて2階をもつ完全自立式。ブリッジ部分は鳶の使う金物を組み合わせて張弦梁構造になっています。吊り足場用のチェーンにターンバックル、単管足場ベースのアンカー用ホールにシャックル留めなど、金物の流用を駆使しています。階段にはもちろん足場用のスチール階段。鳶は建築現場で3役とも呼ばれる頭を使う職種。現場の状況に合わせて変化させながら足場を組んできた場数は、内装としても非常に融通のきく経験です。鳶内装。拡張性もあるのでとても便利です。2022年現在では、単管パイプの可変性や再利用性が建築や内装で多く活躍しています。鳶職が内装を手掛けるのはおすすめです。

現在サタデーファクトリーが製作している暮らしにまつわるインテリア各種は、このような成分が元になっています。ローカルに木の素材があれば活かし、町に点在する工場に技術があればそれを活かします。そして普段暮らしている何気ない不都合や不便さはものを作り始める動機になっています。

​「何屋さん」と定めることをしていないのですが、それはきっとサタデーファクトリーの伸び代です。分解したり統合したりしながら、より良いと思える未来をDIYしていきたいと考えています。

今後ともご贔屓のほど、宜しくお願い申し上げます。

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