ここは都市近郊の雑木林です。
木の間に小屋がいくつかあって、インテリアの組み立て作業や出荷作業ができるサタデーファクトリーの中継拠点です。屋外には大きいテーブルがあり、会議が開けるようになっています。頭の上にはクヌギやなにかの落葉広葉樹が枝を張り巡らせていて、一枚目の屋根になっています。見聞きしたところによると、夏は直射を遮ってくれて、冬は葉っぱが落ちるため日光が届き、そこそこ快適なようです。そうはいっても雨は落ちてきますので、要所には白いテフロン膜のタープがかかっています。夏場の明かりがともる夜、ここはご近所の友人たちに良く知られたカブトムシの採集スポットになっています。
そして何よりここは、製品をさわって買うことのできるショールームになっています。使って経年変化した雰囲気を感じて頂くのには、実際に使用されているものを見て頂くのが一番です。製品のテーブルでお茶でも飲んでいただければと思っております。夜はビールもありますので、帰るのが面倒な場合はそのまま小屋に泊まれるように整備しようと思います。グランピングの視察を行ってきたPICA秩父ではかなり大規模に、楽し気に設備が整っておりました。中をぶらぶら歩いただけなのですが、私にとっては丁度良いアウトドア加減です。ここで肉を焼いてビールを飲み、帰りを気にせずだらだら過ごし、寝れば良いんだぁ。と想像するに、かなり気持ちの良いところと思われます。
http://www.pica-resort.jp/chichibu/
雑木林のサタファク中継拠点では、朝に近所の農家の親父さんが野菜を持ってきてくれる位にならないといけません。都市近郊には小屋による無人の野菜販売文化をもつ地域が意外と多いものです。木材や単管パイプの骨組みに、ベニヤ板やトタン板、割り竹にブルーシートなど、入手しやすい素材を組み合わせたファーマーズハットが道路わきに点在しています。鮮度が売りのファーマーズハットは、直射が野菜に当たらないように角度にひと工夫あるものや、西日が入らないように暖簾がついているものなど、各社で鮮度に対するゆるやかな追及がなされているように思われます。
近所の農家のお父さんやお母さんに、礼儀正しく、元気に挨拶をしていれば、小屋は野菜を置くところだという元来の文化があるわけですから、きっと軽トラに野菜を載せて来てくれるはずです。きゅうりやトマトを筆頭に、切って味噌などをつければおいしい系のものであれば、我々がある程度おつまみに消費することは目に見えていますので、良いビジネスを展開できる素地は持っていると思われます。農協や直売所に持っていくその帰り道に、雑木林に寄って帰るような。そういうご近所付き合いです。
サタデーファクトリーにはちいさな拠点が沢山あるのが似合うと思っています。多拠点で制作を行う私達には、共用できる中継拠点が規模に応じて点々とあるとものすごく便利です。拠点での実販売やインターネットによって得られる収益を基に、全国の都市や都市近郊にサタファクの中継拠点となる共有の溜まり場をこしらえていくイメージです。それは空き家を使ったものなのかもしれませんし、町工場の跡なのかもしれませんし、廃校なのかもしれません。地域によって得られる事が違いますので、こうと決まったイメージは持つべきでないと思っているのですが、むしろ拠点のイメージはバラバラな事の方がかっこよいと思っているところがあります。
名古屋の拠点は工場跡地で、北関東の拠点は雑木林、鳥取の拠点は百貨店の1区画。今度出来る仙台の拠点は空き家を3つ無理やり繋げているらしい。という具合です。
雑木林というのは一昔前まで燃料の産出地であり、畑の肥料の採取地でした。人間の生活に必要な、加工された自然の一つの姿だったのだろうと思っています。時代に合わせて人間が手を加えてきた、大木のない加工された自然の雑木林が、今度はサタファクの中継拠点に生まれ変わってもよいのではないかと思っています。それはかつて薪や肥料を取りに来ていた農家の人たちが、野菜を販売しに雑木林に立ち寄るような変化でもあります。オオタカが住んでいるといわれていたり、トラストの対象地になっている雑木林も少なくありませんが、基金を募ってボランティアで整備する以外の方法があっても良いと思っています。
今は各種の変態を総称し、「ちかんにちゅうい」などと書かれている残念な雑木林を、モノづくりの異業種の変態の溜まり場に変えたいと思っています。変態には変わりないかもしれませんが、もう注意は要りません。そのとき指揮をとるのは、樹木に精通されているような庭屋さんなのかもしれません。